鉄の塗装のお話


鉄はなぜ錆びる?「ゆっくりとした燃焼」との戦い

最近、現場で延々と「錆落とし」をしてました。指先の感覚がなくなるような作業の合間に、ふと考えた「錆」の正体について少し整理してみました。

1. 錆びる=鉄が「燃えている」のと同じ?

鉄は空気中に置いておくと、水分と酸素の力を借りて少しずつ姿を変えていきます。これが「錆(さび)」です。

化学式で書くとこんな感じです。

4Fe + 3O₂ + 6H₂O → 4Fe(OH)₃

この水酸化鉄が、やがて私たちがよく見る赤茶色の錆(酸化鉄)に変わります。この反応の厄介なところは、できた錆が「スポンジ状」であることです。その隙間にまた水分が溜まるので、中へ中へと錆が進行してしまいます。

実は、酸化という現象は「燃焼」と同じ。鉄粉が火を吹いて激しく燃えるか、数十年かけてゆっくり酸化するか。そのスピードが違うだけで、本質的には同じことが起きているんですね。

2. 「錆止め」と「上塗り」の最強コンビ

この酸化を止める唯一の方法が塗装です。よく「錆止めを塗る」と言いますが、実は2種類の塗料が役割分担をしています。

  • 錆止め塗料(下塗り):鉄の表面にガッチリ密着し、錆を抑えることに特化した「盾」です。ただし、紫外線等には弱く耐候性が低いので、単体ではすぐにボロボロになってしまいます。
  • 上塗り塗料(ウレタン・シリコン等):錆止めを紫外線や雨から守る「鎧」です。耐候性に優れ、美観を保ちますが、鉄に直接塗るには密着力が足りません。

この2つがセットになって初めて、鉄を酸化から守り抜くことができるのです。

3. 最強の防錆剤は「エンジンオイル」だった!?

昔、シャッターの塗装を頼まれたとき、前住人が「動きが渋くなるたびにエンジンオイルを刷毛で塗っていた」という現場に遭遇しました。

当時は「そんな奴おらんやろ!」と驚きましたが、いざ洗ってみると、古いシャッターなのに全く錆びていなかったんです。

結局、オイルも「空気と水を遮断する」という理屈は塗料と同じ。濡れた膜で守り続けていたわけですね。(もちろん、見た目とベタつきは最悪でしたが……笑)


最後に:結局は「下地」がすべて

今回、私が格闘していた「錆落とし」という作業。

結局のところ、どんなに良い塗料を塗っても、下地の錆が残っていれば内側からまた腐食が始まります。

「錆を落とす=塗料を密着させる土台作り」

地味で気が遠くなる作業ですが、これこそが鉄を守るためのもっとも重要な工程なんだと自分に言い聞かせ、ガリガリと錆を削っています。

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